今、林業の現場で起こっていること

  • 2013.11.17 Sunday
  • 16:23
 何時もの事ながら、このブログを放置してしまっている。毎回、多忙を理由にしているが、今回も同じ言い訳を使う(?)。今日、ブログの管理ページをみれば、この間に、多数の方が訪れて頂いた事を知り、驚くと共に慌てている。そんなワケであわてて書いた今回の記事である。この間様々な事があり、皆さんに伝えたい事が山ほどあるが、書く時間が無い! 出来る限りの努力をするつもりなので、見放さずに気長に待っていただきたい。
 尚、当方にて新規に立ち上げた「木の家づくり」グループのホームページの作成も行っている。御興味があればこちらも覗いてみていただければ幸いである。
▷▷▷http://natulogy.com
 




少し前になるが、国内の木材価格の上昇に関する記事があった。その一部を抜粋して、下に転載する。
 
日経新聞 10月25日掲載記事
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO61651740V21C13A0QM8000/
 住宅の柱に使われる国産製材品の問屋卸価格は、杉KD正角(3メートル×10.5センチ角)が1立方メートルあたり5万5千円と中心値で前年同月比22%高い。ヒノキKD正角(同)は6万4千〜6万7千円と同11%高い。
 全国森林組合連合会(東京・千代田)がまとめた国産丸太の9月の取引価格は、杉柱用丸太が1立方メートル1万600円と前年同月比3%高。ヒノキ柱用丸太は1万6400円と同19%高い。4月から6カ月連続で前年同月の価格を上回った。
 円安で競合する輸入材が値上がりした影響も大きい。柱用に欧州材を加工した集成管柱は現在1立方メートル6万400円前後。直近安値の1月比25%上昇しており、国産より上昇に勢いがある。
 同様の木材ならば輸入材が割安になるのが一般的だが、輸入材のほうが1割高くなるケースも出てきた。国産材の割安感が強まり木材を住宅部材に加工する首都圏のプレカット工場の幹部は「住宅市場では輸入材から国産材への切り替えを進めるケースもある」という。
 政府も木材の自給率を引き上げるため4月から木材利用ポイント事業を始めた。大和ハウス工業やミサワホームなど住宅大手は国産材仕様の戸建て販売を強化している。
◇抜粋転載ここまで◇

 
 この時点で、当方の産地九州熊本上球磨地域においては、目立った値動きも無く、記事に書かれている丸太価格も、昨年の暴落前価格に戻していない事をツイートしたところ、西日本の木材市場に詳しい人からから情報をいただいた。
 
 この夏に高知県で操業を開始した「おおとよ製材」の出現により、市場での原木丸太が不足しているとの事である「10月以降、原木丸太価格が急激に上昇している。木材加工業者は採算割れ状況で丸太に走り、四国・中国はもとより、関西の合板工場にまで影響が拡大している。四国の大手製材所は九州の桧を高値で買い始めた」と聞かされた。この情報通り、九州熊本球磨地域(九州で最も内陸の産地)でも、この後、桧丸太価格が見る見るうちに上がった。杉もじりじりと値をあげ、暴落前の価格を回復した。

 国産材需要が拡大傾向にあるとはいえ…、この夏は台風の影響が大きかったとはいえ…一カ所の大規模製材所が増えただけで、これほどまで広範囲に影響を及ぼすほど、林業の足腰は弱っていたのか? 四国では徳島にもう一件、大型製材工場建設の予定がある。また、中国地方や九州では木質バイオマス発電の計画が目白押しである。この情報提供をいただいた人の言葉ではないけれど「今後どうなるんでしょう??」・・・今週、熊本県庁を訪れた際に、以前、くまもんのマネージャーを務めていた(ある意味花形役職かも…)林務部署の担当者も・・・全く同じ「ことば」を吐いた。

 これも、つい先日の話。熊本県球磨地域において、県からの要請で素材生産関係者が一同に集められた。内容は、現時点において、森林経営計画の進捗が30%に満たない現状についての話し合いだったらしい。これに加え、更に補正による予算の積み増しや、来年度、一律に15%増しを敢行する話も出たようである。しかしながら、いくら予算を積み上げても、素材生産者にすれば、人手不足で対応が出来ない「ありがた迷惑」な話なのである。

 最近、何処に出向いても、林業の深刻な人手不足を耳にする。上球磨地域と並び筆者が関係する産地の、奈良県十津川村においても、村としては国内最大の資源量を誇りながら「きこりさん」の不在により、年間5000㎥の素材生産実績しか残せないでいる。
 年間25万㎥の素材生産実績をもつ熊本県人吉・球磨地域に話を戻す。一定規模を持つ素材生産者にすれば、この丸太の高値時期に、何としても材を出したい筈であるが、極最近までの安値をきらい、既に、国有林等の施業を請け負ってしまっている。これらの契約では、内容通りに施業を行わなければペナルティーが発生する。従って、今の時期、自山(民有林)に作業員をシフトする事が出来ずに、高値を眺めているだけで、他人の山で作業のみの請負仕事をするしかない。

 仕事が発生し、雇用が生まれれば、やがては人が集まると考えがちであるが、そうは単純に行きそうにも無い。林業に対する予算と同様に、他の公共事業にも国費が散撒かれており、林業よりも条件の良い土木や建設の現場に人が流れている。林業人口は更に減少しているのである。しかも、積み上げられる予算はその金額と共に成果量が求められている。つまり、単価が定められており、この単価が、現状に沿わない安値なのである。この状況で「伐って出せ!」と圧力をかけられた所で施行する人がいないので無理である。従って市場に丸太は出て来ずに、さらに値をあげる。

 通常、深刻な人手不足は人件費の高騰を招く。そこに問題は有るものの市場の原理・原則である。それを考慮せずに予算を組めば、事業が目的を果たす事は至難である。このまま未達事業と余った予算を積み上げるつもりなのか?
 低層公共施設木造化政策や地域型住宅ブランド化事業、木材利用ポイント等で需要を喚起するのであれば、それへの対応を可能にする為に、供給側を整備することは、行政・政策の責任である筈だが・・・。これまで縮小過程にあった林業の規模を考慮する事も無く、資源量のみを根拠に政策を作成したのか? もっとも、これもアベノミクスの見せかけの景気対策と理解すれば、人件(人権)費を押さえ込む事は、さもありなん・・・とも思う。

 筆者は常々、役所の森林・林業政策に対して疑問を持ってきたが、本当にその再生と自立を目指しているのだろうか? 昨年の国産材需要が僅かながらも拡大する状況で丸太価格が大暴落すると言う「市場原理」に反する現象。地域型住宅ブランド化や木材ポイント等で需要を喚起しながらも、川上に還元するシステムも無く、林家が依然低収入に喘いでいる現状。深刻な人手不足に対して人件費を抑えた予算、等々を鑑みて、現場を全く考慮しない方針に怒りを感じる。本来豊かな筈の日本の森林は、役所の机の上に存在しているのであろうか? 昨年の丸太暴落時に「丸太価格が下がれば、国産木材製品にも競争力が発生するでしょ!」と暴落容認発言した林野庁職員がいた事を記しておく。(森林・林業再生プラン、林業経営計画を解説する全国キャラバンにて九州地区での発言)

 そもそもが、木材自給率50%目標自体は支持するもの、それを経済成長戦略として掲げている事に大いなる疑問を抱いている。自然と言う多様性に向き合わなければならない事業を、単純な経済的思考で割り切った方針は、既に「拡大造林」で失敗を経験している筈である。確かに、森林林業には、資源問題、雇用、地域活性化等々の経済的側面は多々ある。しかし、それらは自然の良好な循環に沿ってこそ維持継続が可能であり。見せかけの「経済」は一時的にそれなりの「儲け」をいずれかにもたらすが(ユーザーや林家でない事は確か)、その循環に支障を来たし、自然から大きな返礼を受ける事になる。そして、その返礼は「儲け」を得た者だけに限らず、全ての人々に降り掛かってくる。何倍にも巨大化して・・・。





 
コメント
私は10年来、木質バイオマスの利用に関わるNPO法人の会員として、活動をしてきました。森を守るには、森を利用する需要を作り出し、森と言うインプットと木質を有効活用するアウトプットが循環しなければとの想いから出発したNPO法人です。

1)「地元の木で家を作ろうプロジェクト」に参加しています。家を建てたい人(注文主)と我々見学者は、林業家の山に行き木を切っているところ、それを製材所で製材しているところ、工務店で加工しているところ、建前をする作業、壁や屋根を葺くところの現場を順番に見て回ります。このプロジェクトで、非常に多くのことを学びました。林業家は江戸時代からの林業家で,代々4世代位を前提にして林業をやってこられた方です。苗木も自分の森で落ちた種で自生したものを選んで植林をすることが、その土地に合った木に成ると言われていました。木の水分を早く減らす為の葉枯らし乾燥も見ました。

製材所では、玉きりを台座の上で転がし、レーザー光の直線部を当てながら最も真っ直ぐで、板もある程度取れる様に調整していました。

工務店では、柱材やのじ材にしたものを細い角材を直角に挟んで積み上げ、風通しの良いところに積んで仕上げ乾燥をしていました。
また、溝打ちや突き出し等の位置を決めるのは、すべて尺と言う比較的細い角棒に目印がついたもの一本を基準として、すべて溝切り等の位置に合ったところを示すものです。溝切りすべき垂線等はすべて墨打ちで行います。木の曲がり等が有っても必ず組み上がるからです。
巻き尺等で柱材等の溝切り位置の寸法を直接測ることは一切しません。巻き尺等で寸法を測ると間違い(ミスをする)可能性があるからです。

2)間伐に関しては、作業道の重要さを学びました。小型のショベルカーで幅2m位の作業道を網の目のように作り、林内作業車で間伐した木を麓の土場まで運ぶ実験をやりました。間伐すべき木の選び方、間伐の周期はどう有るべきか等を学びました。我々は照査法と言うことを学びました。これは上空から見たとき、木々の円錐状の真下の枝葉が大きくぶち当たっている木を間伐すると言うやり方です。そうすれば、残った木には全ての葉に日光が当たり生長が促進出来ます。この時、開いた凹三角形の隙間に新しい苗を植えて行く。
間伐しない山林では60年経っても、得られる間伐材の径が25cm位です。木が真すぐなら10.5cm角の角材が取れる限界です。
我々はそのように密植された人工林の木で炭焼きをしました。立派な堅い炭が得られました。広葉樹並です。それだけ年輪が薄く堅いと言うことです。

3)木質ペレットのガス化発電の実験も続けています。この装置もすべて我々の手作りです。1kWx数Hr の実績は得ましたが、タール除去の問題で苦労しています。

4)木質ペレットの熱利用の例として、木質ペレットボイラーを購入し、湯を沸かし、足湯槽を作りました。間伐材を加工し角材を積み上げ、隙間に接着剤を塗って作りました。
一つは非常に小型のもので、2トントラックに乗せられるものを作りました。これはイベント会場に運べることを前提にして作りました。
また、同じく間伐材を使い20人が一気に入れる足湯槽と木組みは細いですが、屋根付きの小屋も 作りました。これ森の公園に常設しました。

5)我々は獣害対策として、里山の裾を奥行き50m位を皆伐しました。里山と田畑の間に空間を作るとイノシシや猿は田畑に出ることを警戒してほとんど出てきません。

まだまだ、日本の山林に合った林業、木質利用の施策を見つけることが非常に多く有ることを実感していますが、我々NPO がやっていることを普及できないことに、もどこしさを感じている今日この頃です。
  • Tom-J
  • 2013/11/25 9:17 PM
コメントする








    

recent comment

  • この国の木材業界の不思議な動向
    株式会社者古代人スガオカ (11/16)
  • 国産スギCLTが、政府の新成長戦略に組み込まれた! これってどうよ?
    fujiwara (07/04)
  • この国の木材業界の不思議な動向
    渡邊豪巳 (12/21)
  • この国の木材業界の不思議な動向
    fujiwara (12/21)
  • エコキュートに関する私の個人的理解(原発推進の補完制度としてのオール電化の根幹設備)
    静の闘士 (11/27)
  • 今、林業の現場で起こっていること
    Tom-J (11/25)
  • 木質バイオマスの考察 その1: 浮世絵を見て資源量観点からの考察の必要性を感じた。
    田畑 豊史 (07/24)
  • 奈良県十津川村を視察して、筆者の、これまでの国産材への取り組み環境が恵まれていた事を実感した
    渡邊豪巳 (07/08)
  • 奈良県十津川村を視察して、筆者の、これまでの国産材への取り組み環境が恵まれていた事を実感した
    小西のりお (07/08)
  • 前回のブログをアップした翌日に、林野庁が昨年(24年)の用材需給実績を公表
    渡邊豪巳 (07/07)

search this site.

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM