この国の木材業界の不思議な動向

  • 2013.12.20 Friday
  • 19:57
  先日、ナチュロジーハウスのサイトのコラム欄に「国産木材の乾燥技術確立に関して“喫緊の課題である!” との認識が、業界内不在の危惧」との記事を寄稿した。いつもは、技術的、特に木材乾燥についての記事への反応は鈍いのだが、今回は、結構なレスポンスがあり、正直なところ、驚いている。以外と多くの方に読んでいただけた事は嬉しい限りであるが、そうであるなら、もう少し、角を落として、平坦な表現にすべきだったと思わないでもない。
 その反面、表現する事を控えた個人的見解(妄想)もある。それを、この個人のブログに綴ってみる。同じ、木材業界の方で、不愉快な思いをする人がいると思うが、予め、飽くまでも個人的妄想である事をことわっておく。
 そのコラム記事を読んでいない方のうち、時間のある方は、下記のリンクに目を通して頂ければ幸いである。
 
不思議な研究レポートや基準値
 コラム記事の前半は、集成材用ラミナ製材の乾燥をはじめとする品質確保が不十分な現状で、その集成材どころか、CLT(これも集成材ではあるが…)に、国を挙げて、躍起になっている事に疑問を呈している。先を見る事は良い事だが、既に、足元の小石に躓いているのに・・・。ちなみに、このCLTは、高知県が岡山の銘建工業(大手集成材メーカー)を誘致して、この夏に開所した大規模工場のおおとよ製材が先導しており、今回の補正予算で纏まった補助金を受けるようである。過去に防衛庁長官を努めた代議士と強力なタッグを組んで進めているとの事である。

 今回、筆者が、問題にしたかった事は、CLTでは無く、記事後半に紹介している研究レポートとJAS規格でのAD-30の件である。

 レポートを公表した研究者を知らないため、軽々な事は言えないが、国産木材に関わる研究者なら「高温乾燥」への危惧を知らないとは思えない。それにも拘らず、筆者の様な素人であっても、容易く反論する事が可能な上、悪意までも感じ取らせしまうレポートを、堂々と発表する真意が解せない。一体、裏で何があったのか?…と勘ぐってしまう。どの様な研究を行おうとも、その自由は保障されなければならないが、反面、それに対して批判する自由もある筈だ。その権利を持って発言させて頂く「全くもって意義も効用もなく、好ましからざる事態を招く可能性すらある、不良研究である!」

 AD-30規格基準については、含水率30%で出荷する危険性を、コラム記事に書いているが、そこで述べている事は、極々、当然の事であり、関係者ならすぐに理解頂けると思う。筆者の知る範囲の専門家・研究者は皆、異口同音に疑問を呈している。しかしながら、夫々の立場もあり、声を上げる人はいない…。中には、研究者としての良識に従い発言する人がいても良い筈なのだが…。ここにも、この国を歪にしている、同調忖度(強要圧力が有るようには見えない)姿勢が垣間見える。

 それにもまして、この様なリスキーな基準値を公的機関が採択しようとしている(結果は判らないが、検討はしている)事には、大きな不信感を抱く。なぜ、AD-20(せめて25)にしないのか? 不具合が露見し始めれば、自分たちも困るだろうに・・・。もっとも、AD-20にするなら、ADの符号は必要なく、単純にD-20で良いのだけれど・・・。

◇◇◇

これほどまでに理の通らない研究レポートや、規格基準の検討が存在するのは何故なのか?

期待された程売れていない国産集成材
 現在、国の木材自給率拡大方針や為替、増税駆け込み等により、幾許かの需要は拡大している。もっとも、原木丸太が値上がりしているのは人手不足等で材の供給が追いついていない為で、加えて言えば、原木丸太価格は、暴落前に値を戻し、それを少し超えたに過ぎない。相変わらず、林家は厳しい林業収入を強いられている。更に、円安による燃料高騰に喘いでいるのが現状である。

 すこし、余談を挟むが、国は木材自給率を引き上げるとは言っているが、国産材需要自体を伸ばすと表現する事は殆ど無い。今は、駆け込み需要で伸びてはいるが、時限的な現象であり、トレンドとしては、木材需要全体が減り続けている。その中、国産材需要が増えずとも維持するだけで自給率は上昇する。ここで詳しくは述べないが、興味のある人は林業白書等で御確認頂きたい。その状況の中、林家に取っての採算割れ価格の合板需要だけが伸び、製材需要が減っている現状で、多少の値上がりが有ろうが、林家収入は依然として厳しいままである。

 木材ポイントやブランド化住宅等の国産材振興政策の効果を見た時に、上記のように合板需要は順調に拡大しているが、国産集成材は、中国木材のハイブリッドビーム(スギを米マツで挟んだ集成材)以外は、思いのほか、伸び悩んでいる。コラム記事に書いたように、ラミナ製材の品質確保もままならず、歩留まり率が悪ければ、リーズナブル感の漂う価格も提示できない。しかも、集成材とは言え、スギ集成材の強度は、大半がE-68でしかない。値段が高いにもかかわらず、場合によっては(小サイズ梁桁等)スギ製材品(無垢材)にも劣る。
 コラム記事で紹介している大規模ラミナ製材所は、今では、タマホームの専用間柱工場の様相を呈していると聞く(当初からラミナ品質の間柱製造は謳っていたが・・・)。いずれにしても、自給率拡大方針の後押しがあっても、期待された程に国産集成材は売れていない。

 木材ポイントや地域型住宅ブランド化事業において、一棟あたりの国産材使用割合を過半以上と定めらており(間柱や合板の解釈に違いは有るが)、全てを国産材にする必要は無い。その条件に従い、土台は桧製材品、柱は杉か桧、間柱は杉を使用し、そして、梁桁は米マツ製材品、前出のハイブリットビーム、中には当方のように杉製材を採用するところもあるし、外材(RW等)を引き続き使用しているところも結構な数で存在している。国産集成材の入り込む余地は、今のところ無い。
 
国産集成材を生産するのは、助けてもらえる立場の「強き」人達
 現政権は、皆さんも御損じのように、強きを助け、弱きを挫く政府である。その強きとは、さしずめ、大企業と資本家、官僚と言ったところだろう。これにマスコミや宣伝屋、御用学者等が連なる。
 産業としては、他と比べて小さな市場しか持たない木材業界も、大手と弱小に2分化されて来ている。国内の製材業界は、7%しか存在しない大型製材所が、全体加工実績の6割を占める業界である。この小さな業界においても、この国の中枢は中の強き人達しか眼中にないと思われる。先頃終了した新生産システムと言う補助制度は、大型工場にのみ補助すると言う代物であった。

 現在、思う程に売れていない国産集成材を製造するのは、殆どが、業界を代表する様な大御所ばかりである。前出の政権中枢の大物政治家(ニューヨークタイムズでA首相・I幹事長と共に名指しで批判されていた為このように表現した)とタッグを組んで、CLTを推進する企業も、国内第一の集成材メーカーである。これら助けてもらえる立場の強き人達が、苦戦しているとなれば、今後、どの様な展開が繰り広げられるのであろうか? 同様内容を考えて自ら進んで提灯を手に持つ研究者や各種機関、行政マンがいないとも限らない。
 
「高温乾燥有意論」や「AD-30」の国産集成材不振に対する提灯効果
 上にも書いたが、木造建物の土台・柱等の正角材は杉・桧製材品(無垢材)が売れている。今現在、市場にはこれらの製材品が供給不足で並んでいない。梁桁は米マツ製材や杉と米マツのハイブリット集成材、外材集成材が売れている。国産集成材が本来入り込む場所は、梁桁材である。しかし、現在売れている米マツやハイブリット材は、強きもの連合の仲間内が供給している。しかも、粗一社独占で…。外材集成材に至っては、国産材を扱う集成材メーカー自信が製造している場合も多い。この状況の中で国産集成材が取って代わろうとするターゲットを杉・桧等の製材品に絞り込む事は容易に想像出来る。

 杉・桧を始めとする製材品は、昔から存在し、一定規模の製材所から中小零細製材所までがその生産を行っている。つまり、古いタイプの業界関係者が担っている分野とも言える。この古い業界の悪しき体質として、安易な側に流れる癖を持つ上に、未だ持って、木材乾燥を行う事に抵抗感を示す人間が、少なからず存在する現実がある。これは、木材の品質確保に関して、購買側の目利きに委ねられていた過去を引きずっていて、品質の善し悪しは、見て買った者の責任だと公言する木材関係者が存在する環境に依るものである。その上、乾燥に至っては、過去、大工(工務店)が施す作業であった為、関係者にその必要性や責任を理解する人間が多数を占めていない現実がある。

 その反面、良識ある関係者は、高温乾燥の問題も含めて(良的中温域乾燥法や複合乾燥法の開発など)、状況の改善に取組んでいる。市場ニーズや取り組みの効果等が相まって、人工乾燥材供給割合と共に良質乾燥材供給も僅かながらも増えていた。しかしながら、依然として、大多数はニーズに押されて仕方なしに乾燥措置を施しているケースが少なく無い。

 この状況で、高温乾燥優位論や含水率30%を良とする基準値が示されれば、多くの業界関係者が、自分に適した安易な方向に走る事を想像する。これらに品質リスクが存在する事はコラム記事にも書いているが、木材関係者の多くは、日頃から、ユーザーと触れる事無く生産を行っており、ユーザーの不利益等への理解は不在で、少しでも、生産者都合を押し付ける事が効率的生産との誤解に満ちあふれている。

 その結果、不具合が多発し、やがて、杉・桧の製材品(無垢材)が、需要者・市場からの信頼を失い、集成材に取って代わられる。これら研究レポートや新基準は、その時、立派に提灯効果を発揮する。

◇◇◇

 今回は、些か(否、多分に)荒唐無稽なお話しを書いた。しかしながら、この様な荒唐無稽を妄想させてしまう程に酷いレポートであり、新基準である。そのことを御理解頂ければ幸いである。

 今回、文中で「強きもの」と表現している集成材メーカー等も、工場や設備は最新であっても、所詮、古い体質を引きずった業界関係者である。杉ラミナ製材の品質確保の克服も出来ない状態で、国産材普及促進の追い風を頼りに、利得を目論んだところで、好結果を期待するのは無理がある。しかも、これらの企業は、国産材が売れない時期には、森林の行く末も考慮せずに、外材加工で財を成した経緯がある。いまさら、日本の森林非常事態などと言いながら、国産材活用を訴求する姿に疑問を抱く。そして、その訴求先はユーザーを含む社会全般ではない。主に「強きを助ける」立場の人達がターゲットである。

 木材業界内の強き者も弱き者も、その多くが、同様にユーザーメリットに思いを馳せる事が欠落していた。そして、今もその体質がしみ込んでいる。その結果が、森林・林業の再生を訴えなければならない事態である。業界内でどの様に振る舞おうと勝手だが、その不利益を被るのは常にユーザーである事を理解出来なければ、今後、存在する価値は無いと考える。
 



 
コメント
AD-30の規格が検討されることは、木材の素人という事なのでしょう。木材内の水分は自由な水分と細胞内の水分と区分され含水率30%から細胞内の水分が抜けていき、その際に木材の変形が起こるという事は昔から常識となっています。
木材乾燥は乾燥技術ではなくそれ以前の前処理の問題と思っています。様々な条件の異なる木材を同時に乾燥させるために問題が生じます。同じ条件の木材とする前処理を検討すべきです。水中貯木や林業地での貯木技術を考えるべきと思います。伐採から長期間貯木するのはコスト的な問題もあるのでしょうが、出荷調整のためにも必要と考えますが。
  • fujiwara
  • 2013/12/21 9:52 AM
fujiwara様、コメントありがとうございます。JASの認定機関には日本唯一の森林・林業・木材関連の研究機関が関わっています。その担当研究者から、疑問と共に聞かされたのがAD-30です。それ故にその不可思議さを記事にしました。私は、乾燥の前処理も、養生等の後処理も含んで乾燥技術と捉えおり、その確立が必要と思っています。いずれにしても、木材を装置に投入してスイッチを押せば、乾燥材が出来上がってくるというのは、幻想である事が、既に明らかになっていると考えます。
  • 渡邊豪巳
  • 2013/12/21 9:50 PM
地方の産業と雇用と創生は温暖化防止の煌燻木材乾燥
煌燻木材乾燥は1500年間も地球温暖化を防止の鼎を継承
鼎は法隆寺や白川郷等の世界遺産の建造物を多数建造 
   煌燻(こうくん) 鼎(かなえ)出展:信州森林博物館

各位様
古代人スガオカ 代表酋長 菅岡健司と申します突然のメール
差し上げる無礼をご容赦ください。

●公的機関も煌燻木材乾燥は経済性と安全性は抜群と評価

1:燃料は雑草、廃材、樹皮、未利用木材、林地残材、放置竹林、
  災害時の流木等で長さ12m以内の切断と泥洗い不要
  ペレットやチップやマキなどの加工も不要。
 環境省⇒これらの燃料はCO2排出量はゼロで温室効果ガス削減
 環境省規制課⇒煌燻木材乾燥は乾燥炉に該当する
        
2:曲げ強度試験:化石燃料使用の蒸気乾燥木材に対しては
  1.35倍強い。生材に対しても1.08倍強い
  出典:宮崎県工業試験場工芸支場平成9年12月18日

3:高温性カビ。中温性カビ。好乾性カビなどの発生ゼロ
  健康建材認定制度プロゼェクトチーム平成11年3月10日
  プロゼェクトチームメンバー:厚生省+通産省+国土開発

4:化石燃料使用の蒸気乾燥木材は組織細胞の破壊有り
  出典:八戸工業大学エネルギー学科 平成7年2月14日

5:引っ張り試験:化石燃料使用の蒸気木材より1.3倍強い
  出典:八戸工業大学エネルギー学科 平成7年2月23日 

6:アメリカ松の防蟻試験に於い
て全中死亡の確認が見られた
   出典:鹿児島県工業技術センター 平成9年10月17日

A:煌燻木材乾燥は鼎とオンドル床暖房の組み合わせです
  オンドル床暖房は昭和59年、建設省主催の省エネコンクールで
  住宅金融公庫総裁賞を受賞
オンドル床暖房について
  暖炉の炎で室内の空気を暖め、排熱を床下に通して床暖房し
  70度の湯を毎日200リットル貯湯し、最後は屋根雪を融雪

B:煌燻木材乾燥は平成8年東北地域創造的企業活動推進協議会
  より東北ベンチャーランド奨励賞受賞

C:煌燻木材は建築+土木+河川護岸+木製漁礁+古代遺跡
  景観などで採用され活躍中
    http://www.h4.dion.ne.jp/~kodaijin/

D:乾燥中に160kw/h以上の発電と排煙から水素を生成し
  約100人が使用できる湯を毎日15,000リットル以上彩湯

E:木材以外、衣類品、工業品、農産品、海産物なども乾燥可
煌燻木材乾燥は休眠中の倉庫、工場、廃校体育館などで構築可

F:鼎伝承の煌燻木材乾燥は皮付き丸太を立てた状態で乾燥
  木材特有の割れ、曲がり、反り、ヤニなどの発生は無く
  木目や木肌も最高に美しい。 

※DVDと詳細資料をご希望の方には2500円を頂いております
電話:070-5323-3301
  • 株式会社者古代人スガオカ
  • 2015/11/16 10:45 AM
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