国産スギCLTが、政府の新成長戦略に組み込まれた! これってどうよ?

  • 2014.06.28 Saturday
  • 14:48

 前回の当ブログの記事や、ナチュロジーハウスサイトのコラム記事に、国産杉CLT普及への疑問を書いた直後、政府が新成長戦略に組み込んだ事を、下記の記事で知った。あまりのタイミングの良さ(?)に笑ってしまった。国が後押しをしていることは知っていたが、筆者が、国産CLTの普及を、現状では困難だと確信しているが故に、まさかここまでとは思っていなかった。これでCLTに関する補助金が大幅に拡大する事は間違いない!何とも勿体ない話である。やがては外材CLTが主流となるのに、国産材振興を錦の御旗にして、税金が注ぎ込まれるのである。本当に勿体ない! その補助金(血税)が、森林に還元される事が無い事は最早明らかであるばかりか、林業収入の圧縮圧力となるのである。筆者は、本末転倒の林業衰退戦力だと考えているのだが・・・。  
国産スギ建材の普及、政府が促進 新成長戦略
2014/6/24 2:00日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2003C_T20C14A6PP8000/

 政府は国産のスギなどを使った新たな建築資材の普及に乗り出す。「クロス・ラミネーテッド・ティンバー(CLT)」という欧州生まれの資材で、木材を多用し、耐震性に優れるとされる。国内では現在は建築基準法で認証されていないが、24日にも閣議決定する新成長戦略に普及の加速を明記する。国産材の需要を創り出すことで、林業が成長産業になる道筋を探る。
 CLTは板を垂直に重ね合わせた集成材で、欧州で1990年代半ばに開発された。厚みのあるパネルに加工でき、高い耐震性や断熱性、遮音性を期待できるという。床面積あたりの木材の使用量が多く、導入が進むことで本格的な利用期に入るスギなど国産材の活用の幅が広がるとみる。
 CLTは国内では国土交通相の特別な認可がなければ、壁や床といった構造材には使えない。規制の緩和に向け、国土交通省と林野庁は実証試験を進める。新成長戦略には「2016年度早期をめどにCLTを用いた建築物の一般的な設計法を確立する」と明記。建築基準法での認証を急ぐ。
 政府は今春、実績づくりにも着手した。都道府県向けに林業活性化への補助金を出し、地方自治体や民間企業などを対象に、CLTを使った施設の設計・建設費用の半額を支援する。北海道や福島県、岡山県では14年度中に集合住宅などの建設が始まる見通しだ。支援先には、設計や建設を通じて得られた各種データの提供を求める。
 CLTの活用は国内では高知県大豊町の3階建ての集合住宅だけで、実績に乏しい。海外には10階建てのアパートなど施工事例があり、国内でも木造の高層建築物への導入をめざす。ただ、仮に建築基準法で認証を得ても建築メーカーが採用に踏み切るかは不透明で、政府は補助金を設けることで実績の積み上げを急ぐことにした。
 安倍晋三政権は農山漁村全体の所得を向こう10年間で倍増させる大目標をかかげる。林業の成長産業化を柱にすえ、新たな木材需要の創出を課題にあげる。国産材の供給量は12年に2031万立方メートルで、自給率は28%にとどまる。政府は供給量を20年に3900万立方メートルと2倍近くに増やし、自給率を高める狙いだ。
 
引用記事転載ここまで
 
 
 この記事を読む一般読者の多くは、その背景を知らない為に、このCLT成長戦略を良い取組だと理解すると思う。特に、本来、本質を見極めようとする良識派のうち、書籍「里山資本主義」に共感する人の多くが、良的な取組だと無意識のうちに判断するのだろう。

 この記事に感じる問題・疑問点を個々に挙げると長くなるので概要だけを述べるが、林業を成長戦略・成長産業として語るには、その供給能力と自然の循環・保全への観点が必要になる。しかしながら、当該戦略は、需要の拡大のみでしか語られていない資源収奪型の刹那的金勘定にすぎず、成長の為の必然である筈の「持続」に触れられていない。その欺瞞が明確に記されているのが、最後の段落で、TPPを進める現政権が農山魚村の所得倍増を目標にしている事の矛盾(大嘘!)を無批判に紹介した上、「7年後には国産材供給を倍増する!」とのこれまた大嘘を書いている(正確には政府の言う嘘を、無批判に書いている)。木質バイオマスやCLTで需給倍増したなら、林家・林業の赤字は2倍を遥かに超える金額になる!・・・が、そもそも誰が伐って出してくる? 昨年度の僅か6〜7%の拡大に対応出来ないのが、この国の林業の現実であるのに・・・。 (結局長くなってしまった・・・)

 本来、報道とは権力に対して批判的視点で監視し、その問題点や背景等の事実を、民(国民・市民・民衆・大衆?)に知らせるのが、根幹役割の筈である。しかしながら現実は、上記記事のように、ストレート記事の体裁を醸しながら、問題点を覆い隠して、実は権力の広報機関でしかないのが実態である。書籍「里山資本主義」に至っては、高等な世論操作のテクニックを駆使して、木質バイオマスやCLTを肯定に導く事になっているが、その著者の一が天下の報道機関NHKなのである。

 CLT新成長戦略の記事を検索してみたが、上記記事のみにしかヒットしない。新成長戦略自体の記事はあるが、真っ当・正当な批判をしていたのは東京新聞位しか確認出来なかった。森林・林業分野が人々の関心事として優先順位が低い事は理解していたが、映画「ウッドジョブ」や書籍「里山資本主義」は話題になるものの、未だ、根幹に関わる情報に関心が集まる分野でない事を、改めて、思い知らされた次第である。

 このブログを読んで頂いている読者の方は、筆者が、木質バイオマスや国産スギCLTに懐疑的な事を理解頂いているとは思うが、夫々が本質部分に問題を抱えている訳ではない。むしろ、本来は良的な取組である。しかしながら、現在の森林・林業の実態と乖離した方針で進める政策は大いに問題視している。今まさに目の前で国が過ちを犯す姿を見つめていなければならない状況に戸惑いを感じている。何も出来ない! 精々が、このブログに思いを書く事しか出来ないのである。一体、どれだけの効果があるのだろう?

 今この国で、集団的自衛権やTPP、貧困・格差・・・等々の、国を危うくする程の過ちが大量に犯されている。それらに比べて、森林・林業分野の過ちなど小さな事かもしれない。しかし、筆者が関わる分野であるからその危機感は、筆者にリアルに襲いかかる。言い換えれば、その他の大きな過ちに危機感は覚えるものの、そこにリアルが存在していないのかもしれない。そして、多くの人達が、その日その日の生活に追われ、問題意識や危機感を感じてはいるものの、そこにリアルが不在なのだと思う。中には誤ったリアル感でファシズムに傾倒する人も・・・。

 上に述べた様々な過ちも、森林・林業に関する過ちも、根幹は同一のものだと考える。民と自然からの剥奪により一部の人間が利を得る構造・・・。国内の森林資源を放置したまま諸外国の森林を破壊する行為、拡大造林とその後の放置に伴う花粉症の被害、4t車一杯の間伐材を伐出しても缶ジュース一本買えない状況、原発が爆発して大量の放射能を人々と森林等の自然環境に浴びせた事・・・。これらは、かならずそこに犠牲者と利得を得る(得た)者が存在している。大多数の権力とは無縁の人々と自然を犠牲にして、特定の人間に利益が集中する構造の帰結先は戦争である。報道が批判的視点を無くしてしまった現在、事態は帰結点・戦争を目指して進んでいると考える。

 些か話がそれたが、権力者が成長戦略と言う稚拙な経済的観点で森林・林業を語る時には、林業組織・企業を補助金で操り(厳密に言えば犠牲者のうち)、森林所有者や林業従事者を犠牲にして、一部の大手木材産業のみが潤う構造を指すものと理解する事が賢明だと感じる今日この頃である。勿論、必然的に自然環境の循環も犠牲になる。そして、大多数の民がその犠牲者に加えられる。

 
コメント
CLTで作られる建物は新たな需要ではなく、他の工法で建てられていたものです。つまりコンクリートからCLTに置き換わっただけのことです。コンクリートの材料は鉄を除いて国内でまかなえます。鉄もリサイクルを考えればすべて国内の資源と言えます。トータルでは何も変わりません。
成長戦略とは少なくとも海外からの輸入に置き換わるものか、輸出を含めて新たな需要を創りだすものでなければなりません。今の政府の成長戦略は何の策も持ち合わせていないことの証明です。
国産木材の需要を増やすためであれば、まず行うことは輸入木材に置き換わる方策を必死に検討することです。その必死さが何もないのが残念です。
国産ラミナー材でヨーロッパから輸入しなくてもすむようにすることが今取り組むべき課題です。CLTでどうのこうのと言う前に集成材での利用も進んでいない現状をどうするのかということと思うのですが。
  • fujiwara
  • 2014/07/04 3:44 PM
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